被曝作家と呼ばれた大田洋子さんは、日本人が広島・長崎の原爆を遠い地で起きた天災かなにかのように感じている、アジアのどこかの国にまた核兵器が使われるかもしれないというときに危機感を感じていない、と批判していたようです。本当に、それを人ごとと捉えて無関心でいるかぎり、平和をつくりだすことはできないのだとつくづく感じます。
同じように、私達は沖縄の基地を遠いことと思っていないでしょうか。沖縄に基地が集中しているのは、単に環境破壊や騒音とか米兵の犯罪とかの問題だけではなく、日本全体が世界の中でどういうポジションをとるのか、に関わっているのだと、「沖縄密約」(西山太吉著 岩波新書)を読んでわかりました。沖縄密約が存在するという西山さんのスクープは外務省の女性事務官との関係にすりかえられてしまいました。いまだに情報を手に入れた方法がどうこう、と視点をそらそうとする人もいますが、改憲だの解釈憲法だのときなくさい今こそ、日本国民は本質的な問題に目を向けなくてはならないと思います。
当時の佐藤総理大臣は自分の花道として核抜き沖縄返還を実現しようとし、そのために思いやり予算の原型をつくってしまったり、日米安保を日本事体の安全のためのものではなくし、在日米軍の東アジアにおける行動によるリスクまで背負い込むことになってしまったのです。(今は全世界に広がりつつあります)
タダで返還してもらえたというのもうそで、実際には巨額の血税がアメリカに渡されたことが、外務省に勤務していた吉野さんの証言やアメリカ側の証言でも裏付けられているにもかかわらず、いまだに外務省は隠蔽し続けています。
沖縄における「負担軽減」も本当に負担軽減なのか?と西山さんは問います。佐藤・ニクソン共同声明では基地の整理縮小を謳っているものの、これはたてまえにすぎず、実際には沖縄の米軍基地の縮小ではなく、その機能を最大限、維持し、拡充するための施政権返還であったということです。国民の反発をそらして基地を自由に使う権利は維持しようということだったのです。沖縄返還以来、沖縄の本土並みというより、日本全土の沖縄化がはじまったといえそうです。本来改訂しなくてはいけない安保条約は、それが困難なために「新ガイドライン」という形で変質を続け、日本国民や自衛隊が巻き込まれていく「周辺事態法」や有事法制が作られるに至っています。
普天間基地返還はグアム移設とセットになっており、日本政府はその費用を負担することにしてしまいました。西山さんは辺野古のV字型滑走路ば米軍が妥協の結果にみせかけて実ははじめから狙っていたのではないかと推量しています。「負担の軽減」は「新たなる負担の追加」であり、 「米軍再編」は「日米軍事再編」と呼ぶべきであり、「抑止力の維持」とは実は「米国の世界戦略への参画」であり、「沖縄の嘉手納以南の基地の一部返還ないし移転にしても、沖縄返還以来、はじめての巨大かつ半永久的な新基地の建設と引き換えに実現するものであり、しかもその費用たるや、それだけで1兆数千億円に達する」という指摘に私達は注目すべきです。うかうかしている場合ではありませんね。NOといえる小沢さんに期待したいですね。
中日新聞書評「沖縄密約」



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