2007年04月03日

「内部被曝の脅威」

 「六ヶ所村ラプソディー」を見に行ったときに映画館で買った「内部被爆の脅威―原爆から劣化ウランまで」(ちくま新書)を読みました。「六ヶ所村ラプソディー」を監督した鎌仲ひとみさんと、自ら被爆者でいらっしゃる肥田舜太郎医師の共著です。

第1章 世界に拡がる被爆の脅威 鎌仲ひとみ
第2章 爆心地からもう一度考える 肥田舜太郎
第3章 内部被曝のメカニズム  肥田舜太郎
第4章 被ばくは私たちに何をもたらすか 鎌中ひとみ
第5章 被ばく体験を受け継ぐ 対談

 鎌仲さんは六ヶ所村ラプソディーの前に「ヒバクシャ―世界の終わりに」を制作しています。ヒバクシャというと、広島・長崎のことが頭に浮かびますが、現在チェルノブイリのような事故、核実験、劣化ウラン弾などにより被曝した人たちが世界中にいるのですね。長いこと被爆者を治療してきた肥田医師は、イラクで子どもたちに起きている症状は被曝だと言います。

 肥田さんは若き医師として往診していた先で原爆にあいました。そのときの様子の描写は体験した人のことば故の迫力があります。その後治療にあたったけれども、そのうちに直接ピカにあっていないのに急変して亡くなる人が出てきました。占領軍は原爆被害についていっさい語ることを禁じ、医師はカルテに書かないように言われたそうです。一方でアメリカは被爆者を集めて血液検査などしましたが、治療はいっさいせず、亡くなると解剖して臓器は本国に送っていました。遺族には最初藁をつめた遺体が返されましたが、そのうち親指しか帰ってこなかったという人もいたそうです。

 長いこと、放射線を体内に取り込んだ「内部被ばく」は過小評価されてきました。メカニズムの違う外部被ばくと内部被ばくが同等に扱われてきました。また、WHOよりIATAの力が強いことや、外界の利害関係により異なるデータが採用されたり報告書が数値を低く改訂させられたりしました。国際放射線防護委員会(ICRP)と欧州放射線リスク委員会(ECRR)の出す数字もまったく違っています。ECRRの基準なら、原発の労働者は100倍の人員が必要になるのだそうです。内部被曝の被害者には「科学的根拠がない」と補償もされてきませんでした。

 体内にとりこまれた放射性物質はどこかに付着してずっと放射線を出し続けます。ヨウ素は甲状腺に、ストロンチウムは骨に、と決まった臓器に集中して蓄積します。生殖や造血組織、胎児は細胞分裂が速いので被曝した細胞の傷の修復が追いつかないのではないかともいわれています。「微量な放射線なら大丈夫」というのは神話なのだそうです。
自然界にも放射能はある、といいますが、自然界の放射能には人間は2万年の進化の歴史の中で適応してきましたが、人工的な放射性物質は未知のものであり、自然界のミネラルや金属に似ているので体内にとりこんでしまうということです。生体内では0.25〜709電子ボルトという小さな単位のエネルギーのやりとりがされていますが、ウラン235のアルファ線分子1個の粒子は420万電子ボルトのエネルギーをもって代謝に割り込んできます。周囲の細胞を傷つけると同時に水分子からフリーラジカルを生じさせるので、傷つけられたDNAを修復しようとしても妨害され、放射線を浴び続けることで突然変異は癌へと進展します。
遺伝子が傷つくということは何代も後の世代にも影響があるということでもあります。

 原子炉から100マイル以内で乳癌死者数が増加しているという統計があります(J.M.グールドによる)。肥田医師が日本ではどうだろうかと調べようとしたところ、全国が100マイル以内にすっぽりはいってしまうので比較できませんでした。

 アメリカのマンハッタン計画ではプルトニウムを経口や注射で与える実験が行われていたので、最初から内部被曝を想定していたと思われます。

 1989年アメリカはハンフォードに関する機密文書を公開しました。それにより9基の原子炉から無意識的ないしは意図的に日々の操業の中で放射性物質を放出していたことが明らかになりました。それだけでなく1954年には気候観測気球でヨウ素がばらまかれていたのです。1950年代、風下の砂漠は政府により開拓され、第2次世界大戦と朝鮮戦争の兵士に格安ローンで分譲されていました。甲状腺障害、癌、流産、障害児が多発しました。現在この地区ではあらゆる作物が栽培され、もっぱら輸出されていますが、買うのはファーストフード業者と日本の商社ということです。

 内部被曝の脅威についてわかってきた今、これからどういうエネルギーを使い、どういう暮らしをすればいいのか、と鎌仲さんは問いかけます。

 第5条の対談では、今まで人は功利主義の考え方により、原発による放射能汚染には目をつぶってきたが、核エネルギーを使用すれば全人類が影響を逃れられない。核兵器被害は一部の地域だけではなく、無限の広がりを持ち、子々孫々まで及ぶ。空中に舞い上がった放射性物質は半永久的に消滅せず、いずれ全世界をまわる。核兵器は使用しなくても作ろうとしたときから被曝が始まる(ウラン採掘など)。「放射能が被ばく者をつくる」という単純なことを知ることが一番難しい。まだまだ実感としてわかっていない人が多い。などが語られています。

 被爆者である肥田医師の、自分のためになるわけではないが、語っていかなくては、という意思に感じ入りました。まだまだ原爆の悲惨についても、知らされていない人たちが多いと思います。スミソニアン博物館での展示が止められたように。やはり日本人は率先して世界に核廃絶を呼びかけていくべきだと思いました。

 ぜひじっくり読んでいただきますようお勧めしたい本です。
posted by ヘリオトロープ at 23:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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