2006年12月09日

加藤周一講演会「老人の未来と学生の未来」

 前後しますが、比較的まとめやすい加藤周一さんの講演会のご報告を先にいたしますね。DVDが出るらしく、撮影していましたので、詳細と正確なところは後ほどそちらをご覧になってください。

 駒場の東大に行ってみると、長蛇の人。しかも1列でなく、反対側にも同じような列がありました。900番教室といっても小講堂のように独立しているのですね。会場は満席になり、立ち見のかたも。「知の巨人」とどこかに書いてありましたが、本当にそうだなあ、と思えた講演でした。同時に「強姦出来るくらいでなければ日本男児たる資格無し」と言った日本教育再生機構のM氏や「フランス語は数も勘定できない言葉だから国際語として失格」「文明がもたらしたもっとも悪しき有害なる物はババア」等々数々の暴言を吐く某都知事は辺見庸さんいうところの「贋金」の俗物なのだなあ、とつくづく感じたのでした。

 どうして「老人の未来と学生の未来」なのか、というと、日本人の人生で自由の山がふたつあり、それは親の干渉から離れ、会社など集団の圧力を受けない学生時代と、定年退職を迎えてからであり、元気な老人と学生が手を組めば、日本が間違った方へ行くのを止める事ができると考えるからなのだそうです。いつも講演をすると、会場は老人ばかりということが多いが今日は若い人がたくさんいて嬉しい、ということでした。(私も同感)

 日本国憲法のふたつの柱は「平和」(9条)と「人権の尊重」(11条以下)であり、現教育基本法には「憲法の精神にのっとって」の文言があります。
改憲するということは、海外派兵がさらに行われるようになり、次第に最前線に送られるようになるだろう。米国との軍事同盟が強化されるだろう。すべての戦争は国内と派兵先で人権を破壊する。究極の人権は生存すること。

 情勢が変わったから憲法を変えよう、という人たちは、どう変わったのか具体的に言っていない。

1. 世界的には湾岸戦争、アフガニスタンなど、テロとの戦いといって、戦争が起きてきた。

2. 国内では、新ガイドライン、有事法制(有事とは、戦争をやわらかく言ったことば)など戦争関連の法律が次々作られ、集団的自衛権が議論されている。

3. 国旗・国歌の強要、教科書問題、靖国参拝などがある。

 この3つの流れはひとつの方向を指している。

 ギリシャの昔、戦国の昔から、思想的な正当化や民衆の感情をかりたてることをしない戦争はない。戦争しながら豊かになることはない。国民を洗脳し、人権を低くする。一番の人権は生命、もうひとつは自由。戦争は人を殺す。

 9条1項は国際的にもパリ条約やジュネーブ条約など平和に向かっているので珍しくないが、2項はほかにはコスタリカにしかない。2項を廃止すると、現在ひとりも殺していないし殺されてもいない自衛隊が発砲するようになり、大きく違ってしまう。

 11条では人権を「永遠の犯すことのできない権利」と規定している。憲法には改憲手続きについても規定があり、改憲を考えに入れてはいるが、人権など憲法の精神を変えるのは「革命」である。ドイツやアメリカの改憲は憲法の精神を先に進めて人権を強化するために技術的な細かいことを変えているのである。

 カール・クラウスは「戦争とは虚偽の体系」と言った。
虚偽を見破ることが必要だが、それには経験が重要。


質問に対する答えとして
 ロンドンで暮らしたことがあるが、意見が違うのはあたりまえ、とイギリス人は考えていた。日本では、少数意見に対しては説得し、それでもだめだと村八分にして追い出す。意見の違うときの処理のしかたが違い、その歴史は長い。

 押し付け憲法がいやなら、今の憲法を護るべき。アメリカ一辺倒なのは、いざというとき守ってもらおうなどの見返りを期待しているのだろうが、アジアで孤立してゆくだろう。もし9条が変われば、中国、韓国の反発は靖国どころではないだろう。対外関係はもっと悪くなる。核武装などしたら、さらに悪くなり、悪循環に陥る。

 国民は記憶がなければならない。専門的な議論に引き込もうとするのは、反対を封じるための罠なので、それにはのらず、全体のつながりを批判すべきである。外国の新聞と日本の新聞の誤差を見極める、などすべき。

 加藤周一さんの学生時代は赤紙がいつ来るがわからないことを除けば医学部は比較的自由だったが、情報の獲得の自由が次第に制限されていくのがわかった。支那事変の議論などが雑誌に載っていたのがどんどん少なくなり、反対の論文を書いた人の記事は映画評論などばかりになり、次にその人の名が現れたのは逮捕されたというニュースだった。海外のニュースも激減した。


 隣の席の初対面のかたが「これだけの人は他にいませんよ」とおっしゃっていました。「余人にかえがたい」とは、こういうときに使うことばですよね。
 
 
posted by ヘリオトロープ at 14:16| Comment(0) | TrackBack(2) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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